旅が僕に与えてくれたモノ。
旅をしている時"あなた"は何を考えるか。
見た事の無い世界、人との出会い、そして旅の目的。揺られるバスの中で考えを巡らせて行くと、旅のきっかけは自分の遠い過去と繋がっている事に気がつく。
小学4年生の頃、私の父親はボーイスカウトの団体を勧めてきた。
『たくさん友達を作るんだぞ』
そう親父は言った。
それは、それまで片田舎の地元から抜け出した事の無かった私にとって、別の世界と見るきっかけになった。
"世界"という言葉は仰々しいかもしれない。だが小学生の私にとって町の外へ踏み出す1歩は、とてもとても大きな1歩だった。
そして、経験を増やしていく毎にその活動範囲は広がり、その年の夏休みに今尚忘れられないキャンプへ参加する事になった。
"瀬戸内海の無人島で4泊5日を過ごす"
当時の私は学校の遠足へ行く程度のノリで楽しみにしていた。
が、いざ島へ上陸して言い渡されたのが"自分達の力だけで乗り切れ"の一言。途端に『これは遠足じゃない』と私は悟った。
まずは炎天下に照らされながら浜辺にキャンプの設営。そしてご飯の準備まで。実家にいれば当然の事が、当然では無くなった。
大変だった事の1つに、海に潜った時に離岸流に流さかけたコトがある。海流に足をすくわれ、どうもがいても岸に近付けないのだ。(実際は離岸流に逆らって泳いじゃダメです。)この時初めて"命の危険"を感じたのを覚えている。
徐々に疲労と苛立ちが募る中、ある夜ふとテントから上を見上げた。私は息を呑みこんだ。
"満天に煌めく天の川"
見た事もない量の星々が夜空に広がっている。私は砂浜の上に寝そべりながら、それまでの疲れなど忘れたかのように星を眺めた。
世の中にはこんな綺麗な景色があるんだ、一歩外へ出れば。
幼心にそう思いを馳せたのはこの瞬間だったのだろう。私は『見た事のない世界を発見する楽しみ』を知った。
その後、小学校を卒業すると殆どの友人は地元中学へ進学するなか、私は地元から離れた私立中学・高校へ入学した。
高校を卒業すると、大学のために上京。この時、地元の大学を一切受けなかったのは『東京』という未知の都会に憧れていたからなのだと思う。そして、地元を離れると完全に住む世界が変わった。
さらに大学を休学し、日本を離れオーストラリアへ。オーストラリアを離れて世界中の国々へ。
常に追い求めているのは"未知の世界・領域" だと感じる。自分自身がどういう人間なのか。何を求めてきた人生なのか。旅がそれを考えるための充分な時間を与えてくれたコトに感謝したい。